自治会の寄付強制に違法判決

自治会の決議として全会員に寄付を強制することは、認められるのか。滋賀県の自治会で、自治会費に寄付分の2000円を上乗せすることを決議したのは無効として会員が訴えていた裁判で、大阪高裁は2007年8月24日に決議は寄付を強制するもので思想信条の自由を侵し無効、とする判決を下しました(2008年4月に最高裁で確定)。

この自治会は、以前から役員(組長や班長)に赤十字や共同募金、さらに地区の学校といった各種寄付の集金をさせていたのですが、この集金活動を負担に感じて休会する会員が相次いだそうです。そして、こうした寄付を集金する負担をなくすため、自治会費に寄付分を上乗せすることを決議した、と。
うちの自治会でも、班長になると担当地区の家々を回って共同募金や赤十字社費、社会福祉協議会の会費などの徴収をさせられますが、同じような問題が起きていますね。高齢などで班長ができない(班長の仕事は、大半が寄付の集金)から、自治会を脱会する、という家庭が増えてきました。

しかし、そもそも自治会の役員に寄付の集金を「(役員の役割として)強制」するのも、おかしな話ですね。本来、寄付を集める募金活動は、寄付を募る趣旨に賛同した人が自ら行うべきもので、自治会の役割のような形で「強制」するものではないでしょう。

現在、多くの自治会では、役員に共同募金や赤十字などの集金活動を「強制」しています。こうした役員は多くの場合輪番制ですから、自分の番になると自らの意思など関係なく集金活動を強制されてしまうわけです。共同募金会や日本赤十字社の募集に自ら応じて募金活動に参加するのではなく、自治会役員の役割として集金に回るよう強制されてしまう。こうした現状は、「寄付」「募金」というもの本来のあり方からはかけ離れた強制動員としか言いようがないですね……。

共同募金は、当初から強制的な割り当て募金になっている、として非難されてきました。共同募金や日本赤十字社の社費は、各市町村が地域の自治会組織に「委託」の形で集金させているのですが、本来自由のはずの共同募金の額に関して(市町村の関連団体である社会福祉協議会と実質的に一体の)共同募金会が「目安」と称して「各家庭の徴収額」を指定しています。つまり、「目安」を示して集金させることで、自治会に対し事実上の集金ノルマを課しているわけです(集めた寄付は自治会ごとに取りまとめて振り込まれますから、当然「各自治会の徴収額」も把握されます)。
こうした行政からの圧力で共同募金や赤十字の社費などの集金を強制される自治会としては、役員に集金活動を強制し断りにくい「自治会の集金」として強制徴収に近い形で寄付を集める、さらには会費に上乗せするような形で完全な強制徴収にするしかないのでしょう。

本来、寄付というものは、寄付を集める団体自身がその理念や趣旨、活動実績を語りかけ協力を呼びかけるものだと思います。そして、そうした趣旨、理念に賛同し自ら参加するボランティアが募金活動を行うことで、資金(寄付)だけでなく社会的な関心、賛同を集め運動の理念を実現していくものでしょう。
現在の共同募金会や社会福祉協議会、日本赤十字社のように、行政主導の強制動員、強制徴収で各自の思想信条を無視するような強制集金を繰り返せば、集まるのは資金と賛同ではなく非難ばかり、ということにもなりかねません。もうそろそろ断りにくい自治会に集めさせる形にして集金活動や寄付を強制するようなことはやめて、自ら協力者を募り自発的に参加するボランティアベースで行う本来の募金活動を展開してほしいものですね。

社会福祉法でも、「共同募金は、寄附者の自発的な協力を基礎とするものでなければならない」(116条)と明記されているわけですから。

判決文

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